北海道で暮らしていた子供の頃、近所に馬が飼われていた…といっても、私の生まれ育ったところは馬産地ではなく札幌の住宅街。
古くからそこに住んでいるらしい大きな家があり、庭…いや駐車場のようなところで、板切れ10本程度で作られた極簡単な柵に囲まれて馬が飼われていた。
おそらく元は競走馬。
小学校低学年の私たちにとっては、動物園以外の所でこんなに大きな生き物が飼われていることがとにかく不思議だった。
「柵から出てきたらどうなるんだろう…踏まれるのかな、蹴られるのかな。」「いや、噛みつかれるかもしれない。」と囁き合い、通学路からはちょっと逸れた所にあるその家…いや、その馬の前を通るのは、ちょっとした肝だめしだったのである。
これがヤギやヒツジ…せめてポニーくらいなら、触ってみたり、えさをやったりと多少の交流はあったのかもしれないが、とても子供が「かわいい!」と思えるような大きさではなかった。
やがて私は中学に進み、その通学路は全く通らなくなってしまった。
その名前も知らない馬のことは、正直言ってしばらく忘れていた。
しかし、はじめて競馬場に行って馬を見た時に、私の記憶の中に鮮明によみがえってきた。
その後、その馬がどうなったのかはわからない。
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