「トニー滝谷」

久しぶりの映画館。それも日本映画なんて、いつ以来だろう。作品は「トニー滝谷」。

原作未読。村上春樹氏の他の作品も読んだことがない。「ノルウェイの森」を読んだような記憶があるが定かではない。あまりのブームに自分も読んだ気になっているだけかも。市川監督の作品もCMしか知らない。大まかなあらすじしか知らなかったので、かなり先入観無しでみることが出来たのではと思う。

観終わった後、きっと外に出たらとても寒いけれどよく晴れた午後の街にブランドの袋を持った人が行き交い…って感じだったけれど、仕事帰りの19:00の回に行ったので普通の新宿の夜だった。

以下、ネタばれあります。

全編が西島秀俊さんの語りで進む。もちろん出演者は普通に映画の中で会話を交わしているが、時折、西島さんの語りを引き継いで喋る。場面転換時はいったん暗くなり、動く絵本を観ているような感覚。

トニーが久しぶりに会った父と別れる時に振り返りながら立ち去るシーンと、目の前に綺麗な服があると買わずにいられない妻を表すのに色々な靴と足元でみせるシーンが良かった。

一部分だけが搖れる室内に吹く風が印象的。淡々と進んでいくのにこちらをそわそわさせる。

主演のお二人はそれぞれ二役を演じている。

イッセー尾形さん:トニーと父親よりも、結婚する前と妻を失ったあとのトニーの変化に何とも言えない気分にさせられた。孤独なトニー、孤独になってしまったトニー、ちょっと上手い言葉がみつからないけれど観終わってからもなおジワジワと来る。

宮沢りえさん:素敵な人だ。透明ではないとおもう。透過色のパステルで何色でも出せるのではないだろうか。そのそれぞれの色が混ざった部分で、華や悲しさ、時に醜さを表現しているような感じ。夫の前に寝転がってテレビをみながら笑うシーン、美しかった。

かなり極端な人物を描いているような気もしたが、そうでもないような気もする。何かを切り捨てて関係を断ち、何かに執着することで埋める…そのバランスを調整しながら人は生きているのだろう。

また観たいと思う。でも、それは今すぐにではなくて五年後くらいに。

トニー滝谷・公式サイト)

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