二月花形歌舞伎・博多座

おいおい、福岡まで行っちゃったよ。歌舞伎座、国立劇場、新橋演舞場、松竹座、御園座、そして今回の博多座。恒常的、定期的に歌舞伎公演(除巡業)がある劇場でまだ行っていないのは金丸座と南座かな。まだどこか他にあったっけ?金丸座は今のところ今年の四月に行く予定。南座は京都に観光で行った時に入り口まで行ったのとライトアップされた南座(普通に照明が点いていただけなのか、意図的なライトアップされていたのかは不明)を見ながら川床で食事をしたことはある。

ン年前は「中央競馬全場制覇するぞ」とか考えていたのに、人の趣味はどこで変わるかわからない。

今回の演目は2002年9月に大阪松竹座で公演された「三国一夜物語」の再演。出演者のインタビューやネット上の感想を読むと大幅に手を加えての再編改訂版上演という感じらしい。私は松竹座での初演は観に行ってない。両方ご覧になった方からは的はずれな感想になっているかもしれないがご容赦を。

では感想。

「三国一夜譚(さんごくいちやものがたり)」
   染五郎...富士太郎/龍宮の皇女
   亀治郎...妻桜子/龍宮の皇子
   愛之助...浅間左衛門/亀大臣
   門之助...足利義満
   吉弥....遊女浪江
   幸右衛門..千歳屋亭主
   錦吾....雅楽頭
   高麗蔵...遊女波路/実は妹小雪
   段四郎...富士右門/龍王
   秀太郎...卯原

長く感じたりとか途中で飽きるってことは全然無いし「面白かったぁ」って言えるのだけど、なんだろうなぁ、この感覚。フランス料理ではなく、イタリア料理のフルコース(デザートは強制的にティラミスとパンナコッタの盛り合わせ)を食べてきた感じ。歌舞伎座の一月昼夜、二月夜の部と観劇した自分が少し見取体質になっていたようで、通し狂言っていうのがちと辛かったのかもしれない。

道行の場面は年月を表すために工夫されていて楽しかったんだけれど、背景だけで済まさずに着の身着のままな当事者たちのうしろに季節感に合わせた通行人を往来させるとかしても良かったような…っていうのはさ、長旅しているのは卯原(浅間の母)だけに見えるのよ。

大波にのまれる(竜宮城に行く)直前は太郎・桜子夫婦が、息子の行方と桜子が郭に身売りしたことで諍いになる大詰第一場-元の太郎住家の場-が義太夫から篳篥と琴の生演奏。そこまでは良い、っつーかココはかなり好き。が、そこから間髪いれずに竜宮城っていうのもなぁ(場面転換とお着替え時間はあります、念のため)。その二人が奏でた音で竜宮城への扉が開いて、助けた亀に恩返しされるっていうことなんだろうとは思うんだけどさ。郭での小鼓(浅間)はこれから事件が起きる前の効果的な使い方だった。しかし、こちらは一場面のなかの感極まった部分での演奏が狂言全体の転換期部分のきっかけに使われてしまっているから、この場面自体の位置が下がってしまうようでちょっと不満。じゃあ、どこで演奏するんだよ、なんのきっかけで竜宮城に行くんだよっつーことになるわけで「お芝居作るのって大変ですね」としか言いようがないッス。この不満は私が一場が好きだから生じることだと思うので、ごめんなすってくだせぇ。

花形なんだからって言われたらそれまでだけど、もう少しだけ「枯れ」感というか「寂びれ」感というか、上手くいえないんだけれど、そういうのが強調された方が竜宮城の場面が生きてくるような気がするんだけどなぁ。間口やら劇場の存在目的なんかが違うから無茶なことは承知で言うけれど、国立劇場みたいな殺風景な劇場でやった方が…って、そういうことじゃないんだよ。

うー、ただ単に「どうも歳を取ると脂っこいものはいけません」って言ってるだけか?だな。

でも、面白かったんだよ、ホントに。「欲を言えば」って程度に読んで頂ければこれ幸い。若い人がたくさん観てくれると良かったと思うのにお客さんが少ないのよ!例えば、染五郎さんなら「新感線とかテレビでは見たことあるけど、歌舞伎だとどんななの?」とか、亀治郎さんと愛之助さんなら「お正月に友達に浅草に連れて行かれてちょっと歌舞伎に興味持てたかも」って人が、観に行ったらすごく楽しめる舞台だったのになぁ。で、今度は門之助さん、吉弥さん、高麗蔵さんに興味持つ人が現れたり、「卯原最強!!」とか言って秀太郎さんに興味持って上方歌舞伎にずぶずぶハマるとか…、いや、そんなに世の中上手くは行かないけれどさ。

贔屓の染さんの感想をちょいとだけ。

だんまりの時の染さんの顔、好きなのよね。今回も私的にかなりイケてた。全体的には抑え気味な役?演技?だったけれど、はめられてしまう側の太郎・桜子夫婦はあの位が良いと思う。でも染さん、ちょっとだけ元気なさげに見えたかも。

おっと、最後にもう一つだけ。

亀大臣はヤバ過ぎ、反則技。見ていると声出して爆笑しそうだから何度も染五郎さんの方をみて気を取り直そうとするんだけど、見ちゃいけないと思えば思うほど眼がいってしまうのよ。あの表情、手の動きは客の反応みて遊んでるよな、きっと。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください