おひなさまで思い出す

子供の頃の雛祭りを目前に控えたある日の出来事。

我が家にはたいそう立派な十二段(十段?)飾りの雛人形があり、毎年3月3日が近づくと居間に飾っていた。ちょっとした階段である。この階段、さすがに昇ることはことは出来ないがくぐることは出来る。赤い毛せんから透ける陽射し、電気の明かり…ちょっとしたテントである。マットレスやらダンボールを立て掛けて「基地ごっこ」をしていたガキにとっては、この赤い薄明かりがもれる基地はむちゃくちゃ魅力的だった。ガキは誘惑に打ち克つことを知らない。大はしゃぎで赤い基地にもぐりこんでは出て…を繰り返していた。と、その時、全ての空気が凍りつき、時間が止まった。骨組みにぶつかったのか、毛せんを引っ張ってしまったのか、真ん中あたりの段に飾ってあった桃の花を活けた花瓶が床に転落した。もちろん母親にこっぴどく叱られた、と思う。というのも実は叱られたことは覚えていない。よほど桃の花と花瓶が転落したことがショックだったのかその後の記憶がないのだ。ただただ、お雛さまに申し訳ないことをしてしまったという気持ちだけが残っている。

そのひな人形は我が家が引っ越す時に従妹に讓ったと思う。ン?従妹が生まれた時にあげたのか?たぶん彼女の家にあると思うのだがどうなのだろう。

毎年、街にお雛さまが並ぶと、季節の飾り物でもあるし改めてお雛さまを買おうかと思うのだが、結局買わずにいる。私なりにその時の雛人形に操を立てているのだ。意味わかんねぇーって!

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