先日書いた「しゃばけ」同様、「2005 新潮文庫の100冊」より。
久しぶりの宮本輝作品。この作品は男女の間で交わされた手紙による書簡形式である。書簡形式の小説は好きではないため、あまり手にした事がないのだが、そんな風に思っていた頃より私自身が歳を重ねていることや、最近はインターネットやら何やらとやたら手軽に連絡を取れる時代になったので、少しは違った感覚で読むことができるかと手に取った。
じんわりと静かにしみ込んでくるような文体を心地良く読んだ。しかし、書かれている内容は決して心地良いものばかりではない。別れた夫婦が偶然に再会して手紙のやり取りが始まる。互いの苦しんだ過去を振り返る。痛ましい出来事もある。十年前にきちんと別れることができなかった二人が、自分と相手をきちんと見つめ直す。
日本語っていいなぁと思った。ちょっと朗読してみたくなる文章だった。極力感情表現をせずに淡々とした朗読が合うように思う。