思ったより年の瀬らしい俳句が少ない、かな。
- 寄鍋や蓋からのぞく葱の青
- 湯気のぼる寄鍋の蓋まんまると
- 見えそうで先の見えない冬木立
- 冬木立薄闇に差す光かな
- 冬木立見上げる空の雲低く
- 冬木立見上げる空の低さかな
- 冬木立重なる腕の哀しさよ
- 冬晴れの空にのぼりし傾(かぶ)き者
- 麦の芽や気づかれずともそこにある
- 麦の芽やきっと待ってて待っていて
- 街路樹に揺れる電球冬深し
- マフラーに絡まる風や冬深し
- 夜空澄み息吹きかけて冬深し
- 吐く息の冬深まりて路地に立つ
- 闇は濃く星散りばめて冬深し
- 凍空(いてぞら)や灰色の波岩叩く
- 凍空へ続く山道閉ざされて
- 凍空や見下ろす屋根の無表情
- きみの目が凍空の様に突き刺さる
- ひとり生き睨む凍空明日はくる
- 膝掛けや読み掛けの本受け止めて
- 肩掛けに片想いする膝掛けや
- 袖通すコート冷たし別れの日
- 雑踏で見上げたビルの冷たさよ
- 底冷えの朝は布団と駆け落ちす
- 線香の煙り冷たし墓前かな
- 年の内捨ててしまうの何もかも
- 買い物のとりとめなくて年の内
- 積ん読の山と闘う年の内
- 誰も彼も疲れた笑顔年の内
- ささくれに蜜柑の染みてしかめ面
- 寒禽に返事しながら身支度す
- 寒禽やゆらゆら伸びるビルの影
- 空模様顔色伺い冬至かな
- 空模様心灰色冬至かな
- 冬至なり鬼もそろそろ笑わぬか
- 注連売(しめうり)や乾いた風に嗄れ声
- 輪飾を握る赤子をあやす人
- 往く人を見送り枯野にひとり立つ
- バイク駆るピザ屋サンタの出で立ちで
- ほろ酔いの醒めて見上げる荒星(あらぼし)や
- 荒星や旅の結末訊いてみる
- 凍て星の見送るふたり忍恋
- 白息や消えるを数え待ちぼうけ
- 息白しオープンカフェでやせ我慢
- 空風や背中押してと回れ右
- 室咲きの鉢を横目に葬の列
- 納まらぬ仕事むりやり納め呑む
- 歳晩や持ち越す夢を数えつつ
- 歳晩や曜日感覚何処へと
- 歳晩や窓から見下ろす交差点
- 新たなる出会い求めて暦果つ
自由律俳句
- 二人が見上げる凍空は全く別の空の色
- 吸い込む風の冷たさに鎮まる恋の焔かな
- 目覚めたは夢見か虎落笛(もがりぶえ)の音か
- 仕事納めというけれどこの恋だけは納められない