サントリー美術館にて「乾山拝見!」

5月27日より東京ミッドタウン内サントリー美術館にて「着想のマエストロ 乾山見参!」と題して尾形光琳の弟である陶工・尾形乾山(深省)の足跡を辿る展覧会が開催されており、早速(…と言ってももう一週間経ってるか)鑑賞してきたのでザザッとレポを。

素敵な美術館ですので機会がありましたら是非!

素敵な美術館ですので機会がありましたら是非!


正確な情報や詳細は公式サイトをご覧いただきたいが、展覧会は6つのパートに分かれており、
第1章 乾山への道
第2章 乾山颯爽登場
第3章 「写し」
第4章 蓋物の宇宙
第5章 彩りの懐石具
第6章 受け継がれる「乾山」
とそれぞれタイトルが付けられている。

陶器中心ということで大幅な展示買えもなく、7月20日迄の開催期間中のいつ訪れても十分に乾山の世界を堪能できるであろう。
私も少なくともあと2回は…。

第1章に展示されている本阿弥光悦の「赤楽茶碗 銘 熟柿 (サントリー美術館所蔵)」は以前に展示された時にも目にしているが、本当に素敵。
もうね、本当に熟柿!

第2章は思う存分角皿。
二種類の「色絵定家詠十二ヶ月和歌花鳥図角皿」が展示されているが、ほぼ正方形の角皿の表に花鳥図を写し、裏には乾山の自筆で定家の詠んだ和歌が書かれている。
先に制作された一組(MOA美術館所蔵)は全て狩野派の花鳥図が描かれ、後のほう(出光美術館所蔵)は月に依って狩野派と琳派の絵が混じる。
探幽の「定家詠十二ヶ月和歌花鳥図画帖 (出光美術館所蔵、リストによると会期前半のみ展示)が出展されており、如何に忠実にかつ如何に陶器として絵が再現されているかが分かるようになっている。
二種の花鳥図角皿も見事なのだが、十種の能の演目の情景が描かれた「色絵能絵皿 (出光美術館所蔵)」にもうっとりする。
乾山の署名のある底面がチラシに使われている「色絵桔梗文盃台 (MIHO MUSEUM所蔵)」もこのコーナーの展示になるが、是非表側を!桔梗を!見て!
色絵ものについて多く書いてしまったが、銹絵の作品も見応えたっぷり。
色絵角皿、特に先に挙げた花鳥図は縁の立ち上がった部分にまで絵画が描かれているのに対し、銹絵角皿は絵画は平面部分内にきっちり描かれ、四方の立ち上がり部分には文様が描き込まれており、額装を施した形になっている。
解説にもあったが、やきものに絵付けをしたのではなく、絵画をやきものにしたのがこの角皿の作品群である。

第3章にあるオランダのデルフト焼きを模した二種の向付(共に五客一組・法蔵禅寺所蔵、出光美術館所蔵)は18世紀の作品ながらこの21世紀においても通じる柄と色彩。
レプリカがあったら欲しい!

第4章はサントリー美術館に行かれたことがある方なら何処か分かると思うが階段下の正面になる。
絵画などが展示される両サイドのガラスケースは塞がれ、シンプルに四点の乾山による蓋物が並び、折り返した通路にサントリー美術館所蔵の織部、有田の二点が配されている。
籠を思わせる丸みを帯びた形状の外側と内側とで全く別の趣向の柄、文様が描かれており、一つの器に異なる二つの世界が存在する。

第5章はなんといっても龍田川(竜田川とも)を描いた色絵の作品群である。
「ちはやぶる神代もきかず龍田川からくれなゐに水くくるとは / 在原業平朝臣(百人一首17番)」にある通り紅葉との取り合わせが表現されている。
「色絵龍田川文透彫反鉢 (出光美術館所蔵)」は器の内側外側を越えて描かれた竜田川の流れと舞い散る紅葉は鉢そのものが竜田川である。
しかし、隣に並ぶ二種の「色絵龍田川図向付 (十客一組/MIHO MUSEUM所蔵、五客一組/大和文華館所蔵)」は器そのものが紅葉に象られており、まるで舞い散る紅葉の合間に竜田川が流れているような趣きになる。
並べて展示されている鍋島藩窯の「色絵龍田川文皿 (サントリー美術館所蔵)」との対比が面白い。

第6章は乾山の晩年と江戸における再評価がテーマとなる。
乾山は70歳手前で京都を後にして江戸に移り住み、81歳でこの世を去るが、その頃に描かれた絵画が展示されている。
紙ものになるためここは展示替えがあるので注意が必要。
乾山の系譜は二代目乾山は養子であるものの、三代目は自称とされ師弟関係にあったわけではなく系譜は途絶えてしまうが、四代目を名乗った酒井抱一により編纂された「乾山遺墨 (国立国会図書館所蔵)」により再評価され、乾山の手法を模した作品が作られるようになる。

乾山の署名が書かれた色絵桔梗文盃台の底面

乾山の署名が書かれた色絵桔梗文盃台の底面

以上、煩雑かつ主観満載ながら昨日の鑑賞を振り返ってみた。
鑑賞時はいつものように音声ガイドを利用。
もうね、斉藤茂一さんの声を聴かないとサントリー美術館に来た気がしないくらいになってるのよ(笑)。
図録…どうしようかしら。
あと二回観に行って考えるわ、たぶん買っちゃうけれど。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください