先週のことではあるが、昨年10月に日生劇場で公演された「髑髏城の七人?アオドクロ?」の映像化版を丸の内TOEIにて鑑賞したのでその感想を記しておく。
まずこの「ゲキ×シネ」という企画については“アリ”と判断。但し、上映時間が長いので普通の映画のようにフラッと立ち寄るのは難しいし、座席の質と広さが快適であることが絶対条件かも。最近は映画もDVD販売を見据えて(むしろそちらに主眼を置く作品も少なくない?)制作・公開されているというし、映像作品化を視野に入れた舞台制作が当たり前になっていくのかもしれない。そうなったら、やっぱり大きなスクリーンと音響で鑑賞したいと思うのが人情ってものよ。でも、ペイできるジャンルに育っていくのだろうか?DVD購入前の有料試写会って気もしないでもないんだけど…。半年くらいすれば「ゲキ×シネ」があるとの理由で本公演をパスする人は殆どいないだろうから、舞台演劇やDVDの宣伝にはなってもマイナス影響はあまり無いのかな。
本編が始まって、最初のうちは「笑っていいの?」的な空気が客席を支配していて、役者・観客さらに観客という?動物園を動物園の外から眺めているような?かなり不思議な感覚だった。新感線の舞台って(染さんが出ている時しか観に行ったことが無いけれど)観客が”楽しむぞ”という気迫で一丸になっていてなんだか妙なテンションなんだよね。それでも話が進むうちに徐々に入っていけたし、完璧にとは言わなくてもあの時の舞台の楽しさは甦ってきて満足できた。高田さん、キレイだったわ?。染さんのファンならねぇ、染さんが仮面つけている天魔王と吹き替えの方の天魔王の所作の違いを見分けるのも楽しいかも…って、私、アホですか?いまだに私の頭の中ではアツヒロくんが「太夫?、太夫?、アハハハ、アハハハ…」って走り廻っているくらい面白かった。
映像に関しては、迫力を出そうとするためなのか役者さんに寄った映像が多すぎるように思う。もう少し身体の動きがわかる方が良いと感じた。無界屋のシーンなどは下から見上げるようなアングルでそれもかなり寄った映像ばかりという印象が残った。あれでは舞台を観ていない人には何をしているのか分かりにくいのでは?「汗じゃなくて踊りや殺陣を観たいんだよぉ」と思ったシーンが多かった。役者さんたちの表情がアップで観られるのは良いが、それは一度舞台を観た人間にとってのおまけ的要素を含むものとストーリー展開や映像演出の上で必要なものとは別ものだと思う。映像化によって、よりドラマチックに感じられるシーンがあることも確かなのでバランスが難しい。自宅でDVDを観た時にはどんな風に感じるのかはわからないし、大きなスクリーンが見上げる位置にあり、更には劇場という空間で観ているからこういう感想になるのかもしれない。販売DVDと劇場公開用の映像化は一緒なのだろうか?まぁ、よほどジャンルが確立されて興行的に黒字が出て仕方が無いってことにならない限りわざわざ別なものは作らないだろうなぁ。(アカドクロのDVDってもう販売されている?ゲキ×シネ第1弾と同じ映像なのかな?)有機物である舞台を無機物に閉じ込めて、記録としての映像化ではなくて別ジャンル作るってんだから、ちょっと荒技だよなぁ。「映像化したよ、DVD売るよ。頑張ったし手間かけてるから、大きなスクリーンで観てみてよ。」という程度なら長続きしないと思う。DVDは作るだろうし売れるだろうから試行錯誤する余裕はあるのかな。
自分はアオドクロの舞台公演を2回観た上で今回のゲキ×シネを鑑賞しているので、知らない芝居をこのゲキ×シネで観た場合の感想はわからない。うーん、今思えば舞台を観に行かなかったアカドクロが上映されたゲキ×シネ第1弾に行っておくべきだったのか?しかし第3弾があったら必ず観に行こう…とは簡単に言えないが、観に行きたいと思っていながら行くことができなかった芝居がゲキ×シネ化された場合にはたぶん行くと思う。
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