歌舞伎座十月大歌舞伎

歌舞伎座十月筋書き

歌舞伎座夜の部に行ってまいりました。演目は「井伊大老」「実盛物語」「雪暮夜入谷畦道」の三本で、お目当ての仁左衛門さんは二つ目の「実盛物語」にご出演。

到着後は早速筋書きを購入し、続いて食事の予約。(今回は打ち出しの演目に合わせてお蕎麦(鴨せいろ)にしました。)座席は通路側でしたので、売店をさらっと見渡し、喫煙所で一服してからゆったりと席へ…。舞台正面の良席で筋書きに目を通しながら開演の時を待ちます。前日に電話したんですが、本当に良いお席だったのですよ。

まずは幸四郎さんと雀右衛門さんの「井伊大老」。井伊大老という歴史上の人物は取り扱いが難しいですね。大河ドラマ「新選組!」は姿は出てこずに「大老さまが殺された!」で終わっちゃうし、しかも殺したほうだけを取り上げてるからなぁ。正直言うと、前半はちょっと退屈だったんですよ。でも、後半のお静の方(井伊直弼の側室)が出てきてからは、それはもう素晴らしくて!雀右衛門さんが愛らしくて本当に素敵でした。正室にヤキモチ妬いたり、仏門に入ろうと決心したかと思えばやっぱりイヤなどと、複雑な女心がほほえましかったり、悲しかったり…。「田舎へ帰りたい、苦労はしたけど二人で過ごしたあの頃に帰りたい」と望郷の念を訴える井伊直弼をみつめているお静の方をみていたら、私、珍しく眼を潤ませてしまいました。歌舞伎を観ていて眼に涙が溜まってきたのって、玉三郎さんのぢいさんばあさん以来です、ハイ。そのぢぃさんばあさんも、お相手が勘九郎さんで泣いてるんだから私も涙もろいなぁ。でもね、年老いたるんが伊織に、留守の間に子供を病死させてしまったことを詫びるところがなんとも言えないんですよ。こうして再会出来ただけでも信じられないくらい年取っちゃっている二人なのにさ…。って、全然、井伊大老の感想じゃないじゃん。取りあえず泣けたって話ですよ、旦那!

次は仁左衛門さんの「実盛物語」。これって凄いお話ですよね。子供とじいさんが巻き物をつかんだ腕を釣ってきて、その腕を詮議の際に赤児だと偽って差し出したら、その詮議にやってきた人が切り落とした腕で、しかも、釣ってきた子供の母親の腕。その腕を亡骸につけてみたら、息を吹き返して今際の言葉を述べて…。いや、歌舞伎っつーのはストーリーに細かいツッコミを入れてはいけないのですよ。はなっから、詮議しに来た筈の実盛が実は味方で、一緒にやってきた瀬尾十郎も腕を斬られて亡くなった女の実の父親だっつーんだから、赤いシリーズの百恵ちゃんも真っ青ですよ(古っ)。どんなに悲しくて残酷でもどこか救われる部分があれば良いんですよ。話の中に救われる部分がないとしても、観客が現実に戻った時に「自分じゃなくて良かった」と救われれば良いのです。それにしても、なぁ?んであんなにカッコイイのかなぁ。まばたきするのも惜しかったよ…ってのは大袈裟か(笑)。四月の知盛を観られなかったので、どうしても今回は観たかったんだなぁ。義太夫にのって颯爽としながらも、ホロリとした情がこぼれる様子の仁左衛門さんを観ていると、話の残酷さとは裏腹に自分は至福、眼福、至福…以下延々と繰り返す。いや、ホントに良い席で観られて嬉しかったです。オペレーターのお姉さん、ありがとう!これで心置き無く今月は日生劇場に向かうことができますよ…ぉぃ。あー、染さん、実盛やってくんないかなぁ。もちろん今とは言わないですよ。将来の話です。でもやっぱり、いつか染さんがやる前に仁左衛門さんでもう一度拝見したいですね。

で、最後は菊五郎さんの「雪暮夜入谷畦道」。コレに備えて蕎麦を食べたけれど、やっぱり蕎麦は食べたくなりますね。基本的には通し狂言が好きな私ですが、歌舞伎座での見取狂言の楽しいところの一つは、観終わった後で自分にとっては半日の出来事なのに、それぞれの演目の時代であったり季節であったりと色んな「時」をそれぞれ一気に体験してきたような感覚に浸れるところだと思うんですよ。だから、一日で昼の部と夜の部を通しで観ると、さあ大変(笑)。で、今回も冬を堪能してきましたよ。田之助さん演じる丈賀と一緒になって雪道を歩いていました。外に出るとちゃんと十月なんですけどね。四季がハッキリしている地域に生まれたこと、それを巧みに取り入れた文化に触れることができることに感謝したいです。んー、芝居の感想になってないかな。三千歳役は時蔵さんでした。今まであまり時蔵さんが出演されるお芝居にご縁がなかったのか、観劇前に強い印象がなかったのですが「すっ」としていて素敵な方です。歌舞伎観客歴ヒヨッコの私が言うのも失礼ですが、器用そうで色んな立ち役さんと上手く合わせて演技が出来そうな印象を受けました。ちょっとこれから興味津々です♪

というわけで、ざっと十月大歌舞伎の観劇記を記してみました。

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