新年第二回の観劇は、歌舞伎座夜の部・一階一桁列花道内側。鴨せいろ、アイス最中。欲を言えばもう1ブロック内側で…というところだが、舞台までの見通しも良く、花道下は久しぶりだったので十分に満足。土蜘の開演前に亀井忠雄さん(田中傳左衛門さんのお父上)を発見。奥さまの姿はみつけられず。
では、各演目の感想をどうぞ。
一、歌舞伎十八番の内「鳴神(なるかみ)」
鳴神上人....三津五郎
所化白雲坊...秀 調
所化黒雲坊...桂 三
雲の絶間姫...時 蔵
あぁ、やっと鳴神上人と雲の絶間姫に会うことが出来た。もちろん内容は知っていたし観たいと切望していたのにとんと縁の無い狂言だった。で、まず一言感想を言ってしまうと、おもしろかった!
三津五郎さんは、堅物に見えるような見えないような。最初に姫に会った時はもう少し怖くても良いような気がしないでもなかった。話せばわかる方って雰囲気を感じてしまった。でも、気絶したあたりからの変化はとても引き込まれたし、落差を十分に感じることができた。騙されたと知って怒り狂い出してからの方がやっぱり良い。観ている時は一連の流れと思っていたのに、後で思い返すときちんとキメの所が絵巻物的に蘇ってくる。六方は凄い迫力で、腹にずしっと来た。って、文字にしちゃうと軽く感じちゃうなぁ(泣)。
時蔵さん、綺麗だった。前回、時蔵さんを拝見したのは10月の三千歳かな。この雲の絶間姫の方が好きかも。時蔵さんの声と喋り方も私好み。花道ではウットリだったけれど、作戦開始してからはこちらも一緒になって「よしっ、もう一息!」って気分になったりクスッとさせられたりと、とても惹きつけられた。
コンビネーションが良いっていうのかなぁ。姫と上人とを行き来する(観ている私にとっての)焦点がとてもスムーズにスイッチして観心地が良かった。鳴神って女性の方が楽しめる作品だな。
二、新古演劇十種の内「土蜘(つちぐも)」
僧智籌 実は土蜘の精...吉右衛門
平井保昌....段四郎
太刀持音若...児太郎
侍女胡蝶....福 助
源頼光.....芝 翫
正月から僧侶が土蜘に変化っていうのもどうかと思うが、歌舞伎なんてそんなのばっかりだからなぁ。派手だで色んな役がかわるがわる出てくるから良いのかも。化け蜘蛛モノは納涼歌舞伎での「蜘蛛の拍子舞」以来。もっともあちらは松羽目ではないし、蜘蛛も人形で登場するので全く趣きが違う。
段四郎さんが松羽目の明るい舞台に最初に出てこられると、スッと舞台が落ち着く感じがする。最近、いつ観にいっても段四郎さんが舞台にいらっしゃるような気がするのだが実際はどうなんだろう。後で手持ちの筋書きを読み返してみよう。
音若を従えて頼光が登場。八月では蜘蛛だった福助さんが胡蝶で舞う。訪れた胡蝶の正面に立って問いただす音若の目がどの場面よりも必死だったのが印象的。当たり前と言えば当たり前か。児太郎くんの歳ぐらいになると好きでやっているのか、親にやらされているのか悩み始めたりしないのかなぁと要らぬ心配(笑)。
吉右衛門さんは土蜘になってからはもちろん凄くてただただ見上げるばかりの迫力なのだけれど、僧侶の時の不気味さの方が印象的だった。歩いた所は草木が枯れているような気持ち悪い雰囲気。昼の梶原の化粧よりこちらの方があっている感じがする。
吉之丞さん(巫女榊)は普段は老女役等多い方だが、しなやかで可愛らしくてこんなふうにたくさん動いてらっしゃると嬉しい。もっと踊られている姿を拝見したい!高麗蔵さん(番卒藤内)の踊りはいつも綺麗だ。私の席からでは役者さんが交錯して見え難くかったのではあるが染二郎くんは白く塗ると結構キレイな顔してる?筋書き写真対決なら染さんよりイケてるからなぁ。
三、「新皿屋舗月雨暈(しんさらやしきつきのあまがさ)」魚屋宗五郎
魚屋宗五郎.....幸四郎
女房おはま.....時 蔵
小奴三吉......染五郎
召使おなぎ.....高麗蔵
宗五郎父太兵衛...芦 燕
家老浦戸十左衛門..段四郎
うーん、幸四郎さんはさぁ、妹が奉公に出た金で借金返して魚屋を構えた風には見えなんだよ。代々魚河岸の元締めやってる家の旦那さんってくらいかな。お酒を飲み始めてからは十分に楽しませてもらったけど。
時蔵さんのおはまが良かった!雲の絶間姫も素敵だったんだけど、おはまの方が良いかも…って、観るたびにこの前より今日、さっきのより今回って節操無さ過ぎだな。あー、時蔵さんって私の好みなのかなぁ。という訳で、三月は国立劇場に観に行くことに決めました。
久しぶりの高麗蔵さんの女方。以前は立役をされると違和感があったのに、これほど久しぶりだと女方をされているのが不思議に感じる。
三吉は空気読めなさ加減がなんとも言えず、ずーっと何か言いたそうにしている染五郎さんの顔が目に焼きついて離れないので、映画の公式サイトを観てきます。
…というわけで、初春歌舞伎観劇記でした。女方さんが好きなのでどうしても昼の福助さんと夜の時蔵さんに目がいってしまいがち。とても楽しませて頂きました。お二方と左團次さんは新橋演舞場(ちなみに田中傳左衛門さんは浅草一部・二部と歌舞伎座)を掛け持ち。