国立劇場 十二月歌舞伎公演・壱

三月以来の国立劇場。染五郎さんが案内役をされる「社会人の歌舞伎入門」が夜に開催される日だったが、観劇は通常版の昼の部。1階一桁列20番台。柿の葉寿司。土産は無し。

通し狂言「天衣紛上野初花」四幕八場
 序 幕 上州屋見世先の場
 二幕目 吉原大口二階廻し座敷の場、 同 三千歳部屋の場、吉原田圃根岸道の場
 三幕目 松江邸書院の場、 同 玄関先の場
 大 詰 入谷蕎麦屋の場、入谷大口寮の場
  河内山宗俊...幸四郎
  片岡直次郎...染五郎
  三千歳.....時蔵
   あまりに沢山の方がご出演されているので省略ご容赦。

昨年の歌舞伎座で十月に「雪暮夜入谷畦道」を、十一月に「河内山」を観劇しているが、一昨年の国立劇場で幸四郎さんが河内山と直侍を二役(凄い企画だよね、これ。どんなだったのかしら?)で上演された時は残念ながら観劇していない。

さて、今回の観劇はというと…、いやぁ、面白かったわ。河内山と直侍をそれぞれ見取で観るのも良いけれど、こうして通しで観るのは楽しいね。でもそれは、知っているそれぞれの場面が繋がりあっていく楽しさであるかもしれない。まぁ、なんでも楽しいと思える私の性分は得だということだ。

幸四郎さんの河内山はただふてぶてしい訳ではなく、お数寄屋坊主として人を上から見下ろした態度が巧妙。想像していたよりもあっさり味な河内山。いや、すっきりしていたというべきか。悪党連中の大アニキ分という風情が楽しかった。

思えば昨年十月の三千歳を拝見してから私の時蔵さんブームは始まったんだなぁ。ここの観劇感想でそういうブームを匂わすような書き方をしてきたかどうかは自分でも疑問だけれど…。三千歳が登場してきて最初に思ったことは「あぁ、やっぱり時蔵さん好きだわぁ」ってことだったりする。具体的にどこがどうというわけではなく、なんか好きなのよ。どちらかと言えば位の高い役の方が合う役者さんのような気もするのだけれど、「?だよぉ」とか「あいなぁ」なんてセリフを聴くと自然に顔がほころんでしまう私。でもさすがに今回の組み合わせは、少し時間がかかるかも。ただでさえ貫禄勝ちしちゃってるのに、どうしても染さんの線が細いせいか、時折、年下の悪ガキに引っ掛かったお姉さんって感じに見えちゃって、絶対損してるよ?ん。でも、決して似合っていない訳ではない。

さて、染五郎さんの直次郎。初役でお相手が時蔵さんで、さらに通しで上演となると、観に行くこっちが緊張しちゃうよ。で、感想はというと、脚、太腿、ふくらはぎ、太腿、脚、太腿…以下延々とループでクラクラ…。いやまぁ、感想とか言ってもさ、好きな役者がカッコイイ役やってんだから楽しいに決まってるさ。とまぁ、戯れ言はさておき、直侍は染さんに合う役だと思うし実際に似合っていた。でも、最初に登場する大口二階の場を観ている時にふと、花魁の情夫で御家人崩れの悪党ってどんなよ?? って考えたりなんかしちゃったりして。もうちょっと押しの強そうな雰囲気が欲しかったかな。ちょっとさわやか過ぎなのか、私が若旦那イメージを持ち過ぎなのか。その後の三千歳部屋の場で、百両を出して三千歳に返せというところは良かったわ。さっきまでダラダラしていた人が”キッパリ”と言い切るってのは魅力的に見えるものであるけれど。

大口の寮で市之丞(左團次さん)が訪れてからの直次郎と三千歳の屏風越しのやり取りがとても良かった。ここは普段は上演されない場面。屏風一枚隔てるというちょっとしたことで二人のバランスが変化して、煙管を渡すところなんてとても絵になっていたと思う。終盤になって二人の組み合わせに見慣れてきただけじゃないの?と、言われてしまったら反論できないけれどさ。初日から一週間経っていない時点であぁいう雰囲気が所々に出ていれば、この先もっと色っぽくなると思う。

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書いてみると、普段は上演されない場面の感想が主になった。来週もう一度観に行くのが楽しみだ。本当は三週目にも行きたいのだが、いかんせん仕事のある身。我慢我慢。

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