国立劇場 十二月歌舞伎公演・弐

二度目の「天衣紛上野初花」観劇。1階一桁列30番台。江戸ちらし。土産は無し。なんと前回と同じく「社会人の歌舞伎入門」で染五郎さんが案内役をされる日だったにも関わらず、通常版の昼の部を観劇。そんなに拵えていない染さんに興味が無いのか? ってことじゃなくて偶然偶然(笑)。

具体的に言うのは難しいのだけれど、松江邸の二場とも前回より引き締まった印象で、入り込んで観ることができた。幸四郎さんの河内山は「使僧を演じている」色が濃く、二重構造の芝居に客を引き込む力はさすが。彦三郎さん演じる松江候が「ぉぃぉぃ、おっさん。マジ何言ってんの?」って思わせてくれることでとても楽しい芝居になっている。抵抗及ばず使僧に従うしかない松江候ではなく、河内山に騙されている松江候。松江邸書院の場をついつい玄関先の前振りのように思ってしまう私のような不届き者にとっては、今回のように吉原での直次郎とのやり取りを経ることで、観客としても一歩踏み込むことができた気がする。河内山という人物が人気を博したことがちょっと分かったような…。幸右衛門さんがお元気そうで嬉しい。とても活き活きとされていて、大善という役がお好きなんだろうなぁ。

三千歳が前回よりも可愛かったわぁ。所々で「ぅぉっ!なんか可愛い!」って感じられて凄く嬉しかった。前回は廻し座敷の場の感想で「もうちょっと直次郎に押しの強さが…」などと生意気なことを書いてみたけれど、その押しの強さが二割五分増し(当社比いや、筆者比?)になっていて、前回より二人の距離が少し近くみえたからかな。私にとっては丁度良かった二割五分増し。これ以上図々しくなると少し違う気がするのだが、それでも何だろう…、もうちょい何かが欲しいと思うのだけれど分からないな。この次に染さんが直侍を演じた時に「そうそう、この感じよ。」と思わせてくれればそれで良いことだ。吉原の廻し座敷の場と入谷の寮の場のそれぞれに「殺しておくれ」「いや殺されねぇ」というやり取りがあるのだが、同じような言葉を口にしている全く違う場面を一つの芝居の中で観られたことはとても良かったし面白かった。先の場面のバランスが良くなっていたことで、二つの場面の繋がりと二人を取り巻く環境の変化をより感じることができたのだと思う。

新造の京妙さん、段之さんが好きだなぁ。しっかりと存在感がありつつも決して邪魔になることはないし、京妙さんのしっとり感と段之さんのすっきり感がいい具合に噛みあっている。それにお二人とも綺麗なんだわ、本当に。

さて、まとめの一言を…「ふふ、カッコ良すぎ。毎日でも観に行きたいわ。以上。」ってのは流石に馬鹿丸出しだけれど、今回が今年の観劇納めということもあり、とにかく見惚れて帰ってきた。丈賀と蕎麦屋の主人が直次郎のことを「男冥利に?」などと噂をしている時の染さんの表情が今回のツボ。でも、やっぱり前回も書いた百両を出して「いいから返してしまえと?」ってところも好きなんだよなぁ。そう言えば花道での…などと、挙げていくとキリが無いのでこのへんで止めておこう。ま、とにもかくにも楽しんだ者勝ちさ。それにしても終盤にもう一度観に行くことが出来ないのが悲しい。会議が、休日出勤が恨めしい…。

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