歌舞伎座 寿 初春大歌舞伎・弐

夜の部。1階一桁列20番台。茹であずき、天ざるそば。本日の土産持ち帰りは坂田藤十郎襲名記念春のパイ(桜の塩漬けを練り込んださくさくパイ)

一、玩辞楼十二曲の内藤十郎の恋
   坂田藤十郎...扇雀
   若太夫.....歌六
   丹波屋主人...友右衛門
   澤村長十郎...芦燕
   宗清女房お梶..時蔵

初代藤十郎の逸話を基にした菊池寛の小説を原作としている狂言。昨秋読んだ「江戸時代の歌舞伎役者・田口章子著」にもこの小説や初代藤十郎についても書かれていた。昼の夕霧名残の正月といい、藤十郎さんの初代藤十郎への熱い想いが窺える。叶うならこれも演じたかったんじゃないかなぁ。

バックステージものと分類してよいのだろうか。役者が役者を演じる様は幸四郎さんが主宰する梨苑座ではおなじみだが、その芦燕さんや高麗蔵さんなどの

仲蔵に出ていた役者さんも多く出演されていた。上演場面がないことが決定的に違うものの、クライマックスはまさに「おさん茂兵衛」の幕が開く直前で、衣装もそれに合わせてある。その「おさん茂兵衛」は昨年 月に上演されている。おさんを演じた時蔵さんが今回はお梶として舞台に立ち、茂兵衛の役作りが原因で自害してしまう筋立てはちょっとドラマチック。

終演直後からどうも解せないというか腑に落ちないのだ。展開や結末のことではない。そりゃまぁ、酷い話だとは思うよ。でも「ちょっ…、そんなぁ…」とか「いや、ありえないって…」なんて話はいくらでもあるわけで、お芝居としては全然アリでしょう。閑話休題。この「藤十郎の恋」という外題がしっくりこないと感じたのだが、どうなんだろう。

教訓:役者の仕掛ける恋を真に受けないこと。そんな教訓を生かす場面に遭遇するかよっ。

二、口上
   鴈治郎改め藤十郎
   幹部俳優

三、伽羅先代萩-御殿・床下-
  【御殿】
   乳人政岡..鴈治郎改め藤十郎
   八汐....梅玉
   松島....扇雀
   千松....虎之介(初舞台)
   澄の江...壱太郎
   沖の井...魁春
   栄御前...秀太郎
  【床下】
   仁木弾正....幸四郎
   荒獅子男之助..吉右衛門

藤十郎さんの政岡は「どちらかと言えば」という前置きをつけてのことだが、”母”としての立場が強く出ていたような印象。千松が八汐になぶり殺しにされている間、本当によく堪えることができたなぁ、と思わせる。千松の亡骸を抱きながらの場面よりも、千松が苦しんでいる間の堪えている時が印象深かった。

こんな役で初舞台って凄いよなぁと思ってはいたが、虎之介くんはセリフもしっかりしていたし立派に周囲の期待と願いに応えていたのではないだろうか。扇雀さんも一安心かな。

最後の床下は太陽とブラックホールの戦い…って喩えが良くないか。とにかく凄まじい陽と陰のオーラのぶつかり合いで、実に見ごたえがあった。吉右衛門さんの大きさと幸四郎さんの放つ妖気。こういう襲名披露興行でしか観られない組み合わせというか、人間国宝が挑む襲名だからこそ実現したと言うべきか。

四、
島の千歳
   千歳...福 助

太鼓も大鼓も無く、小鼓のみという珍しい鳴り物の組み合わせだったが、小鼓の音がとても心地よい。シンプルな鳴り物と福助さんの華やいだ踊りの組み合わせはとても素敵な一幕だった。

関三奴
   奴....橋之助
   奴....染五郎

毛槍を使った豪快で賑やかな踊り。橋之助さんってこういう顔をすると本当にまるで絵から抜け出てきた人に見える。染五郎さんもいつもながらすっきりとしていて、姿も踊りも”白”って感じ。

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