一桁列一桁番。PARCO劇場は初めて。
「決闘!高田馬場」
中山安兵衛、中津川祐範...染五郎
小野寺右京、
堀部ホリ、村上庄左衛門...亀治郎
又八、堀部弥兵衛......勘太郎
おウメ...........萬次郎
にら蔵...........高麗蔵
おもん...........宗之助
洪庵先生..........橘太郎
菅野六郎左衛門.......錦 吾
うん、面白かった。三谷さんは映画が大ヒットしているので世間的にはそちらに注目が集まっているけれど、お芝居の公演にしちゃあ通常の何倍も煽られていたし、(キャパの問題もあるだろうけれど)予想に違わずチケットも完売状態。「渋谷で歌舞伎が二本も同時に掛かる」というちょっとしたお祭り騒ぎの感もあり、私的には正直やや引き気味だったのだけれど、いざ観てみると芝居の方は実に地に足が着いていた。その分、芝居が進むうちに私の気分はすこぶる上昇。もう一回分チケットを取っておいて良かった。でもってWOWOWに加入していて良かった。三回も観られるのは嬉しい。どんなカット割になるんだろう。
あらすじや小ネタ、舞台装置なんかは色んな方が書かれているだろうから省略、というか話の流れに任せて書くのでネタバレはあるかと…。まあ、いつもそんな書き方しかしてないか。
さて、何から書いてよいのやら迷うね。いささか乱暴に芝居の流れをまとめると、町人に振り回される侍、侍とその門弟に囲まれる町人、町人の中で暮らす侍、結婚を迫る父娘に挟まれる男、侍同士のいざこざに翻弄される町人、それらがごちゃ混ぜになって走るラスト。割とお約束な話ではある。お約束がきっちりしているからこそ、その上での遊びが活きる。そんな芝居だったなぁ。
主要三人の中で唯一人、これまでに三谷さんと仕事をしていない亀治郎さんが凄い。三役全てのインパクトを観客にきっちりと植えつけていた。普段は歌舞伎を観ない人たちはどんな風に感じただろうな。吹き替えの声を吹き替えるというのは昨年の三国一夜譚でも観た趣向だったけれど、やっぱりウケてたねぇ。私は堀部ホリが堪らなく好きだ。「?それはまた別の話」ってのを是非ともやって欲しい。
舞台を引き締める錦吾さんは若手を支えつつみせてくれる存在感。六郎左衛門が全編通じてきちんとしているからこそ、後半の展開で安兵衛と右京、中津川と村上の入れ替わりが流れの中で浮かないのだと思う。まぁ、中津川と村上の風体は十分に浮いているけれど。
萬次郎さんの芸達者ぶりは言わずもがな。安心して笑える役者さんって素敵だ。観ているだけでみんなの顔がほころんでしまう。客席のみんなの顔を観たわけじゃないけれど、一挙手一投足に言葉では言い表せない空気を舞台からではなく背中側から感じた。
大河ドラマに続いて勘太郎くんに苦悩しながらの裏切りを要求する三谷氏。脚本家、演出家って欲張りなサドじゃないと出来ない職業だよなぁ。でもね、良かったわぁ。自分のやっていることは間違っているけれど、本気の安兵衛をみたいと思う自分にも嘘をつけず、やっぱり間違った手段を選択してしまう。亀治郎さんが徹底して侍を演じ、勘太郎くんがこの又八という町人を熱演。後半に向けてこの対比がより濃くなっていくとますます面白くなっていく予感。
染五郎さんの“受け”の芝居って好きなんだよなぁ。勘太郎くん演じる又八が裏切っていたことを知った時や、いい加減にしてくれと責め立てられている時の表情、姿がたまらなくせつない。何かを突きつけられた時の衝撃、慟哭を表現する時の染さんの表情って綺麗なのよね。そう、客もまた欲張りなサドなのである。もうね、最初の酔っていない酔っ払いにすっかりやられちゃってるから最後まで楽しくて仕方なかったわ。と、いつもながら甘いことを言ってみる。
染五郎さんと勘太郎さんが二役、亀治郎さんが三役演じられることや早替りがあることは知っていたけれど、最初の染五郎さんの早替りは完璧に油断していた。座席の位置関係で突っ込んだ先で何かしているようには見えなかったんだよなぁ。でもって、あの着物の色! 赤紫っつーかマゼンタ? またこれが似合ってるから凄いのよ。で、あの中津川を演じる染五郎さんを見て「あぁ、やっぱこの人好きだわぁ」などと再確認する私。
そうそう、安兵衛が出立する時の襷掛けの動作に「おぉっ!」と驚いた。後でパンフレットを読んでいたら、錦吾さんが兄弟子の方から教わった方法を伝授したと書いてあったけれどあれがそうなんだろうか。次回の観劇でチェック。
あぁ、随分と長くなってしまった。さて次回は18日夜の部に観劇の予定。
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