新橋演舞場「朧の森に棲む鬼」vol.1

1階一桁列ほぼセンター。朧鬼御膳。食べやすかったしおいしかった。

プレビューを含めると二回目の観劇。十日余りでこうも引き締まるものか。正直なところ、前回は前半は長く感じなくもなかった。第一幕終わりの評定の場面まで色んなものがどんどんと積み重なっていく。それらは第二幕でぐらつき、ついには尋常ならざるスピードで崩れ落ちていく。何が嘘で何が真実か、何が悪で何が正義かわからない。人とは、自分に都合の良いものが真実であり正義とする生き物である。朧の森が放った小さな火に、自ら油を注ぎ、自らその業火に巻かれる人間たちを描いている…、なんて能書きたれていないで楽しめよ!!という芝居。

以下、ネタバレ有。

最初のオボロたちとライのやり取りは歌ではなく会話で聴きたかったかも。異次元というか魔界というか、そういったところを表現しているんだろうなぁ。それにしても朧の森のセットは素晴らしい。終演後、しばし眺めていた。無数のシャレコウベから目が離せなくなる。

プレビューの時にはさほど印象深く感じなかった評定の場が今回は素晴らしく記憶に残っている。ライがサダミツを斬るところの迫力が凄い。鬼のようなものが鬼になった瞬間といった感じ。この場面に限らないが、マダレの顔芸、腹芸、変わり身も見ごたえあり。

シキブがオオキミに毒を盛る場面は秀逸。シキブはすっかりライに精気を吸い取られていて、前半より二割痩せで出てくる。そう、一つの芝居の中ですっかりやつれてしまっているのだ。立ち去ったツナを「だぁぁぁい嫌い」と睨みつけている時とは別人。とにかくこのシーンはオオキミの愛と優しさが悲しすぎる。

ツナはやはりカッコイイ。いや、カッコ良すぎる。ヤスマサの首を胸に抱くシーン以外は全て自らを針で刺し続けているような女である。

ライの色気と妖気はすさまじくなっていた。ありゃ、目が合ったら殺される。右の眉頭に書いた縦の筋がこれまた色っぽい。嘘を吐き、人を殺めるたびにそのオーラを増していく。ツナをいたぶるシーンは壮絶。次から次へと着替えていくライ。橙色というか金茶色が似合っていたのは少し意外かも。けれど、最後の落武者状態がなぜか一番かっこ良くみえる。

ライは朧の森に獲りこまれたのか、自らの血で朧の森を真っ赤に染め上げることができたのだろうか。

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