中村芝翫さん逝去

本日(10月10日)未明、人間国宝であり俳優協会会長の歌舞伎俳優・中村芝翫さんが亡くなられた。享年83歳。
建て替え中の歌舞伎座の新しい舞台に立っていただかなければならない大切な方が亡くなられてしまった。
今年の1月3日に亡くなられた中村富十郎さんにつづく悲しい報せである。

短い観劇歴の中で最も印象深いのは2005年2月歌舞伎座での野崎村だろうか。
お光を芝翫丈が演じ、久松に鴈治郎丈、お常が田之助丈、お染を雀右衛門丈、そして亡くなられた富十郎丈が久作を演じるという人間国宝五名による大顔合わせだった。
可愛らしくも悲しいお光に私は当時のブログで「お光の変化に合わせて照明まで暗くなっていってるように感じる。」と記している。
記憶に新しい所では歌舞伎座さよなら公演2010年1月に初役で臨まれた車引の桜丸。
私は観劇直後のツイッターで「今まで観たことのない車引だった。芝翫さんの優雅さ、吉右衛門さんの迫力、幸四郎さんの太さ、富十郎さんの怪しさ。」とツイートしていた。
舞踊の女伊達、九段目の戸無瀬、最後の舞台となった沓手鳥孤城落月の淀君など印象深い役は多いが、他の歌舞伎ファンの方々もそれぞれに思い出に残る役があるに違いない。

また、芝翫丈は競馬好きでもよく知られており、文藝春秋2011年1月号(発売は前年12月)にて騎手・武豊との対談では祖父である五代目中村歌右衛門の競馬にまつわるエピソードや御自身と競馬の関わり、楽しみ方について語られている。
歌舞伎ファンはもとより競馬ファンに是非読んでいただきたい対談である。
私は手元に残しているが、文藝春秋さんには追悼企画として再掲載していただきたいものである。

芝翫さん、素敵な舞台をありがとうございました。ご冥福をお祈りいたします。

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