雰囲気で押し切る句が多いです。
恋をテーマにしていたので多少仕方ないですが。
- にごり酒見えぬ恋路を飲みほして
- 愛すほど流るる涙にごり酒
- 別れ際あなたの背中草の絮(わた)
- 草の絮(わた)我が存在の軽さかな
- 無花果の花が咲いたら叶う恋
- 無花果や咲かぬ恋なら枯れもせず
- 無花果や割れて初めて知る涙
- 無花果や恋は隠れて咲かすもの
- いつの日か貴方に添いたい烏瓜
- 絡みつく手に握られた烏瓜
- 坂道を転がり落ちる烏瓜
- 色変えぬ松の様に添うふたりかな
- 色変えぬ松に託して引く身かな
- 色変えぬ松に問われて背を向ける
- 色変えぬ松に問われて目をそらす
- 色変えぬ松になりたしなりたくなし
- 老松の色変えぬ恋とこしえに
- 閉じ込めた恋は胡桃の部屋のなか
- 言えぬまま胡桃に閉じた恋心
- 愛情の裏返しかな鬼胡桃
- 今日こそは胡桃割らんと意を決す
- 井水やせ届く便りの短さよ
- 去る背中涙も水も涸るるかな
- 水澄みて心は濁り身は沈む
- 来ぬ人をともに待たんと鶴来る
- 我は鶴きみを探して渡る空
- 曇天を包む光や金木犀
- 秋暁や一人寝の目は冴えわたり
- 抱きしめた心は何処(いずこ)雁渡し
- 清秋や澱む浮世の男女かな
- 薄紅葉最後の恋と決意する
- 残る虫風に吹かれて飛ばされて
- 出さぬ文書いては消して海螺廻(ばいまわ)し
- 別れ告げ告げられままこのしりぬぐい
- 菊人形着飾るほどに逃げる恋
- 中抜きの大根の様(よ)に選ぶ恋
- 木枯らしに押されてとび込む腕の中
- 末枯れしふたりの影や陽が沈む
- 気づいてとなんばんぎせるすすり泣き