新橋演舞場 三月花形歌舞伎・夜の部

今月の演舞場は初役祭り(笑)。

一、一條大蔵譚 檜垣/奥殿

染さん、ついに大蔵卿に挑戦です。
昨年十二月に国立劇場で吉右衛門さんの大蔵卿を観劇していたこともあって観るまでの期待と不安…待て、不安ってことはないだろうよ、おい。
私の中での大蔵卿は播磨屋中村屋という双璧があるわけで、とにかくどんなだろうというか、これまでの比較的多いと思われる高麗屋播磨屋、播磨屋松嶋屋、松嶋屋さま至上主義的(そんな言い方はない)のお役とはまた違った組み合わせなわけであり、熊谷やら寺子屋やら忠臣蔵とも違った趣のお役なわけで、なんとも不思議な気分で臨んだわけですよ。
珍しく事前のスチール写真もおかしくなかった(何気に失礼なこと言ってる)ので、それなりに期待はしていましたが思っていた以上に似合うお役でした。

檜垣よりは奥殿のほうが良かったと思っていたのですが意外と逆に感じている人も多いようで、この辺りはもう好みなのでしょうね。
檜垣の出で、もう少し柔らかいほうが良いかなーーって思ってしまったせいかもしれません。
首がね、首の辺りがなんか違う…違って見えたんです。
いやまあ、最前列で観ちゃったので極端に見上げる状態だったのと、色々見えなくて良いもの、感じなくて良い空気を感じてしまったのかもしれません。
奥殿の作り阿呆と本来の姿が行き来するところはメリハリが利いていながらも、もう正体明かしてるよーってな阿呆加減で良かったように思うのです。
とにもかくにも四十路五十路還暦過ぎた男性にああいう可愛さを要求する職業もなかなかないものだと関心するわけです。

松緑さんの鬼次郎(って出ないのか、ググるさんよー)はなるほど腹に据えかねて常盤御前を打擲しても違和感がない造形でした。
お京の壱太郎くん、本当に楽しみな若手ですねー。
三十代になったらどんなんなるんでしょう!
最近はテレビにも出ていらっしゃいますが、崩れない品を持っているようなのでどんどん顔を売ったほうが良いと思います。
芝雀さんの常磐御前、好き好んでこんな処でこうして過ごしているわけじゃないという気持ちがじわじわと滲み出ていて良かったです。
吉右衛門さんのご指導の賜物でしょうか、大蔵卿と常盤御前の不遇不本意がバランス良く表現されていたと思います。
檜垣で大蔵卿がお京と鳴瀬の顔を覗きこむところでは、大蔵卿と鳴瀬が接吻してんじゃね?ってくらい近づいいて、吉弥さんが堪えきれていませんでしたが、どうやら他の日も同じことが起きているらいしいです(笑)。

檜垣は京屋シスターズ勢揃いですのでお見逃しなく。

二、二人椀久

あら、夜の部は付番と演目の一文字目が一緒ですね(どうでもいい)。

富十郎さん雀右衛門さんの舞台を見ているときに居合わせた菊之助くんといつか一緒に演ろうと二人で話していた…のか、染さんが勝手にプロポーズしていたのかは分かりませんが、これまた渾身の演目です。
正直言うと、あの椀久の衣装が似合わないんじゃないかと思っていたのですが、そんなことなかったです。ごめんなさい。
良かったわぁ、本当に良かった。
染さんの恋焦がれて放埒してしまった椀久に対して、菊ちゃんの松山太夫は勿論椀久のこと憎からず思っているのであろうけれど、あくまで恋焦がれる側であり且つ幻であることを出しつつも二人の逢瀬がどんなに楽しく幸せだったかがよく表れていたと思うのです(贔屓目炸裂!)。
途中、椀久が振り返る格好の振付けが何度かあるのですが、まるで富十郎さんが乗り移ったかのように見えて驚きました。
体型も何もかも全く似ていない筈なのに本当に似ていたんですよ。
それにしても菊ちゃんったらなんて美しいんでしょ。
冷たさ温かさの出し入れが自在になってきたんじゃないですか?
最前列のおかげで何度も目が合って(と勝手に思い込んで)幸せでした。

◆ ◇ ◆

終盤にもう一度観劇しますが、どちらの演目も楽しみです。
そして染さんの写真を、まだどんな写真が出ているかは知りませんが何枚買ってしまうか恐怖です。

観劇日は一週間程前。最前列ど真ん中。奥殿の大蔵卿が真正面でした。眼福。

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