国立劇場・12月歌舞伎公演「花雪恋手鑑」

前回(こちら)は観劇直後で、他人が読むとあまりにふざけた感想しか書かなかったので、もう一度観に行く前の覚書として改めて感想を記しておきます。


「花雪恋手鑑」

手元にある筋書きの解説を読むと、雀右衛門さん(当時は友右衛門)が小雪を演じたことがおありなんですね。それを最後に上演されていなかったわけだ。芝雀さんはこの演目にご縁があったんですね?。私自身、今年の前半は忙しくて芝居を観にいくことができず、芝雀さんも巡業の方に出ていらっしゃったようで、芝雀さんを拝見するのは、10月歌舞伎座「井伊大老」昌子の方役とこの小雪だけでした。芝雀さん、ちょっと丸くなられた?と思ったのですが、筋書きに掲載されている素顔のお写真(おそらく近影)はさほどでもないなぁ。打ち掛けとか羽織らない役なんで印象だけかもしれません。最初の場面で義母(この方が意外とあけすけ)に呼ばれて出てきたところと、たとえ馬鹿旦那でも旦那は旦那、愛しい許婚が出てきてからの変わり具合が良かったと思います。もう少し弾けても良いかとも思ったんですが、若旦那はまだこの許婚に手を出していないそうなので、あの位で丁度いいと思いました。でも、上方の方たちばかりで上演されたら旦那が来る前後でもっと変化しちゃうのかなぁ。芝雀さんは「へっ???」ってな感じの表情をされると可愛いですね。

で、四郎二郎元信の登場ですが、出てきた瞬間「ふわっ」とした感じ…いや「ほわっ」とした感じ?んー、上手く言えないんですが、まぁそんな感じがしたんですよ。あんた衣装の色に騙されてるよなんて言わないでぇぇぇ。情けないと寂しいが微妙に入り混じっている不思議な顔と気配でした。その後の小雪とのじゃらじゃらとしたやりとりですが、次回は、無心に来た元信がまだ手をつけていない嫁にどのくらい愛があるのか(そんな深い話かどうか知らんけど)を気にしつつ見てみたいです。これが最後と櫛、笄、羽織を差し出しながらも「こちの人」と見送った小雪に「はじめて聞いた、もう一度…云々」と喜びいちゃつく二人の雰囲気と較べつつね。

真葛ヶ原で小雪を襲うところ。暗闇でぶつかった相手が「痛い、痛い」と苦しんでいるのを見捨てることができずに戻ってみたら女が一人…で、結局、欲に勝てずにおイタをしちゃうわけですが、ここ次回チェックかな。行きつ戻りつした結果、結局襲ってしまうわけで、私の解釈が間違っているのかもしれないけど、あの場面って男の客なら「戻っちゃえよ、やっちゃえよ、仕方ないって」と、女の客なら「戻ってこなくていいよ、どんな事情だろうとアンタそれ犯罪なのよ」って思いながら観るところじゃないかなぁって考えたわけです。やることは犯罪だけど犯罪者じゃダメなのよ。「こんなとこにいる女が悪い」じゃなくて「俺ってラッキー♪」て感じじゃないと…って、ここまで書いてアホらしくなってくるなぁ、この芝居(苦笑)。

もともと小難しいこと考えて芝居観てないし、思うことがあっても文章にはしないようにしているからなぁ。でも、この芝居って今度何時誰がする?上演される日はあるの?って感じなので、柄に合わないこんなものを書いているわけですよ。

コトを終えた後の色っぽさは前回書いた通りです(笑)。マジメにかくとイヤらしいんじゃなくて色っぽいんですよ。襲われた小雪のことを忘れて、こっちが照れちゃうくらいなんですよ。ここで小雪のことが気になる人は、この演目って解せないんだろうなぁ。

後は、最後の場面。四郎二郎元信は心入れ替えてちゃんと生きていくのよね?どーも信用ならねぇんだよなぁ。いや、そういう終わり方でも良いのか?んー、昔は省略されることもあったという巻物と宝剣がちゃんと手元に戻ってくる終わり方を選んだのだから、今後は狩野家のためにちゃんとした生活するってのを感じ取りたいと思うようでは上方歌舞伎は向いていないんでしょうか。

全体を通して染五郎さんの四郎二郎元信は「くにゃくにゃ」していました(笑)。でも上方の歌舞伎、和事ってことを考えると「ふにゃふにゃ」している四郎二郎元信が正解なのかも。意味わかんねぇーっ!いや、わかっておくれ。結局はちゃんとした家の長男で、それが見え隠れする「くにゃくにゃ」ぐらいで私には丁度良かったかもしれません。私は染五郎さんと違って関西は好きじゃないのであまりコテコテしいのはイヤだし、どうしてもスッキリしたものを求めてしまうんですね。関西の役者さんが演じるとどうなるのかなぁ、とは思いますよ。やっぱり鴈治郎さんなのかなぁ。染五郎さんみたいに若い役者さんなら愛之助くんとか?んー、なんとなく違う気もするなぁ。でも、このストーリーでしっかり上方されちゃうと、私には濃すぎるだろうなぁ。観てみなきゃわかんないし、観てみたいけれど…。

ともあれ、染五郎さんの上方狂言チャレンジシリーズはまだまだ続くんでしょうね。上方ものはやっぱり無理だろうというご意見の方もいらっしゃるとは思いますが、この挑戦で他の役にも厚みが出てくればそれで良いですし、そういう成果を見せていかなければ、理解や興味を持って共演してくれる人も見つからないでしょうし、松竹さんもO.K.出してくれないでしょう。私の本音は、こういうのも嫌いじゃないけどスッキリした役の方が好きですが、これからも染五郎さんを見守っていきたいと思います。って、何を決意表明してんだよ、ぉぃ。

というわけで、長々と書いてみたけれど、次回の観劇後に「私ったらやっぱテキトーに観て帰ってきてんじゃん。」ってなことになるんでしょうか。

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