歌舞伎座 五月大歌舞伎・壱

昼の部。1階16列目の一等席と遜色ない二等席。鴨せいろ、新茶どら焼き(土産持ち帰り)。

一、「菅原伝授手習鑑?車引」
     梅王丸....勘太郎
     桜 丸....七之助
     松王丸....海老蔵
     藤原時平...左團次

観劇してから日が経っているのだが、ふと浮かぶのが勘太郎くんの梅王丸。久々の歌舞伎座で観た最初の演目だったからかもしれないが、それだけではないとも思っている。私のアテにならない勘が「このヒトって凄い役者さんになるかも」と訴えているのだ。アテにならないとか言ったら勘太郎くんに悪いか。まぁ、要するにアレだ。好きだなぁとか、もっと沢山みたいなぁと思えたっつーことだわ。以前から丁寧に演じる役者さんというイメージを持っていたが、丁寧さに厚みが加わりつつある印象を持った。それとも厚みのある丁寧さという感じか。きれいに生クリームが塗られたスポンジケーキではなくてミルクレープかミルフィーユのような…と、意味不明な例えで逃げてみる。

二、「芋掘長者」
     芋掘藤五郎.....三津五郎
     緑御前.......亀治郎
     友達治六郎.....橋之助

なんともほがらかで楽しい演目だ。藤五郎と治六郎を色んな役者さんの組み合わせで観たいと思った。四十五年振りの上演だそうだが、あまり人気が無かったのかな?でも、舞台上の誰もがしどころがあるし、配役や演出の仕方で更に華やかな演目になるんじゃないかな?花形や浅草なら公演途中や昼夜で役を入れ替えて上演するのもおもしろいのではないだろうか。せっかく復活させたのだから次はまた四十五年後なんてことがありませんように。

三、「弥栄芝居賑?猿若座芝居前」
     猿若座座元....勘九郎改め勘三郎
     芝居茶屋女将...雀右衛門
      同.......芝 翫
      同  亭主...富十郎

華やかだったわぁ。この演目のみご出演の役者さんもいらっしゃるわけで、改めて襲名するって凄いことなんだろうなぁと感じた。たぶん、本当にたぶん、恐らくなんだけれど、男伊達のみなさん、中村屋さんが挨拶している間の鳥屋の中がうるさいッス(笑)。

四、「梅雨小袖昔八丈?髪結新三」
     髪結新三........勘九郎改め勘三郎
     手代忠七/家主長兵衛..三津五郎
     下剃勝奴........染五郎
     白子屋お熊.......菊之助
     白子屋後家お常.....秀太郎
     弥太五郎源七......富十郎

勘三郎さんの前回の新三(平成12年当時勘九郎)は映像で拝見したことがある。忠七の髪を整えつつお熊を連れ出すようにそそのかす白子屋の場面。映像だったので比較するのもおかしなことなのだが、今回の新三は小悪党というより、老獪な極悪人くらいの悪さに感じた。いやまぁ、もう一度見直してみないとはっきり言えないんだけれど、自分の記憶の中というか、印象ってことですわ。お熊を誘拐するってのは、新三は前からたくらんでいたことなのかな。それとも立ち聞きして思いついたこと?詳しくないんでわからないんだけれど。ま、それはさておき、もう少し軽い感じでも…、いくら忠七が人のいいヤツだからって、アホっぽくねぇか?などと思いつつ観ていたのだが、永代橋で忠七に対して正体を現すところで、割と自然に新三の変化についていけた。どのくらいが適度なのかは、演じる人や観る人で全く違うだろう。忠七と一緒に永代橋に向かう花道の出で新三は既に険しい顔になっていること、川端での忠七への仕打ちへの流れを経てみると、先の白子屋の場面での悪さ加減は自然だったのかな。これがテレビや映画なら、白子屋での新三はもう少し怪しくない人(ん、なんか変な表現)に描かれるのかもしれない。そして永代橋では忠七と一緒に観客もビックリする、そこまでいかなくても「ほらね、怪しいと思ったんだよ」程度には思うのだ。でも、このあからさまに怪しい新三をみせつけることで、観客は新三の側に立って一緒に忠七を見下ろしてしまう。悪党が主人公であり、このあと登場しない忠七に対して観客は同情こそすれ感情移入する必要はないのだ。そして適度に同情された忠七はうまく弥太五郎源七にバトンタッチ、となるんだな。なぁんて、私なりの考えを書いてみたが面白ければなんでもいいや。

染さんの勝奴が新三よりも一足先にお熊を連れ去る場面。浮世絵なんかで描かれている雨の中を急ぐ人のような風情で、この芝居の中ではほんの一瞬の出来事だったのだがとても好きな絵だった。

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二月以来の歌舞伎座。そう、ようやく此の度の十八代目勘三郎襲名披露に行ってきた。出遅れもいいとこだが、今年はここまで毎月歌舞伎を観に行っているせいか、さほど見逃したという感覚はない。近々、夜の部にも行く予定。

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