歌舞伎座 寿 初春大歌舞伎・壱

昼の部。1階一桁列20番台。めで鯛焼き(売り場が三階になったのね)。本日の土産持ち帰りは、茹であずき(次回は現地で食べよう)

一、鶴寿千歳
    雄鶴....梅玉
    雌鶴....時蔵

筋書きによると昭和天皇の即位の大礼を記念して作られた曲だそうで、慶事に上演されているとのこと。白の宮中装束が美しく、筝曲ということもありお正月らしく優雅な曲と舞。今年もたくさん素敵なお芝居が観られるように…との想いを抱きながらゆったりとした気持ちになれる一幕であった。

二、夕霧名残の正月-由縁の月-
    藤屋伊左衛門...鴈治郎改め藤十郎
    扇屋三郎兵衛...我當
    太鼓持鶴七....進之介
    扇屋女房おふさ..秀太郎
    扇屋夕霧.....雀右衛門

話題の本物の紙衣。シワなどに布との質感の違いが現れている。展示されているものを間近でみられるのだが、衿の下端とおくみの縫い合わせの辺りが少し破けているところや、帯の端の擦れ具合などをみて「あぁ、なるほど確かに紙だわ」などと感動。こういう趣向は楽しい。雀右衛門さんの夕霧は本当に儚げである。それでいて手先の動きが艶っぽくて観ていてとても不思議な感覚。まさに夢の世界である。伊左衛門が目覚めたところで劇中口上に入る。

三、奥州安達原-環宮明御殿の場-
    安倍貞任....吉右衛門
    袖萩......福助
    義家......染五郎
    浜夕......吉之丞
    安倍宗任....歌昇
    平直方.....段四郎

いやぁ、面白かった。昼はこれが一番好きだわ。前半は浜夕、袖萩、お君の母娘三代の悲哀にただただ感じ入ってしまうばかり。吉之丞さんの格があって情がある役っていいよねぇ。なんかもう凄く好きなんだわ。あぁ、親は大事にせにゃぁならん…って思わせてくれるのよ。福助さんの袖萩は母である部分よりも勘当された娘としての部分が濃く出ている様子。とにかく泣きつづけながらの芝居だが想像していた以上に引き締まってみえた。我が身が引き起こしたこの受け入れ難い結末に決して抗うことが出来ないことを悟っているかのような風情が出ていた。もうね、山口千春ちゃんはスゴイっすよ。永田晃子ちゃん超えか?割と以前から出ている子だけれど、やっぱり昨年亡くなられた音羽菊七さんに教えられているのかな。

前半はグッとくる芝居で、後半はグッと力の入る展開。吉右衛門さん演じる正体を現した貞任が大きいったらありゃしない。義家の方を向いた時の横顔がまさに錦絵。なんか凄い迫力だったわ。染さんもいつかこの役をする時がくるんだろうか。播磨屋型だと袖萩と二役なんだよね。うん、いつになるかは分からんけど楽しみだわ。で、その染さんは義家役。久々にああいうセリフ回しの染さんを観て、っつーか聞いて嬉しくなったわ。丸本物、どんどんやりましょ、ね、染さん。それにしてもどーもあの「小忌衣」ってヤツは誰が着ていても好きになれん(苦笑)。で、義家はというとやっぱり若いし細いかなぁ。でも綺麗だから許す!ってものでもないのは百も承知だけれど、脂ののった鰤と大トロの間に食すエンガワみたいな感じ…って、なんじゃそりゃ。やっぱり若様じゃなくて将なんだし、もうちょい図太さというか、大らかさみたいなのが見えたらなぁ。でも、やっぱり綺麗だから…って、ぉぃぉぃ。

四、花競四季寿万才
    万才....福助
    万才....扇雀

久しぶりに芝翫さんの舞踊演目が観られるなぁ、と楽しみにしていたのだが残念ながら病気休演。それはそれとして、がっつりした演目に挟まれる中、若さと明るさで華やいだ一幕。朝一の鶴寿千歳が宮中の正月ならば、こちらは市中の正月。

五、曽根崎心中
    天満屋お初....鴈治郎改め藤十郎
    平野屋徳兵衛...翫雀
    油屋九平次....橋之助
    手代茂兵衛....吉弥
    天満屋惣兵衛...東蔵
    平野屋久右衛門..我當

曽根崎心中は初観劇。やんわり、モッチリとした藤十郎さんはホントにお若い。ふと思ったのは森光子さんの放浪記…いや、観たこと無いけれどさ。

だいぶ上方歌舞伎に慣れてきた私…と言いたいところだけれど、まだまだかしら。んー、何かが解せないというか、何が合わないんだろう。最後の曽根崎の森の場のテンポというか流れに自分が乗っていけなかったために、今ひとつな印象が残ってしまった。もっとも話の筋という点からみて吉田屋とか河庄の方が好きなのかも。でも、天満屋でのお初と床下の徳兵衛の足を使ったやり取りや、天満屋を抜け出す辺りなどは面白かった。我當さんは十月の河庄に続き、情と味わい深さで素敵だった。

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先月は国立劇場のみの観劇だったので、久しぶりの歌舞伎座。見取で五演目はキツイかな、と思っていたのだがそんなこともなく、坂田藤十郎襲名祝いの雰囲気を楽しんできた。

年も改まったので「かぶき手帖」を購入。先月亡くなられた松助さんが掲載されている。神様は芝居好きなのかもしれないけれど、時にそれは残酷なことだ。合掌。京屋シスターズが見開きで並んでいるのが嬉しい。染さんの写真は昨夏の金閣寺。叔父さまに良く似ている。思わず自分が購入した舞台写真を確認してみたが、手元のショットは手帖のものに較べるとさほどでもない。

次回の観劇は25日夜の部の予定。

One thought on “歌舞伎座 寿 初春大歌舞伎・壱

  1. 匿名

    2005年3月から遡る事40年以上の間、御曹司以外の歌舞伎子役は音羽菊七氏が指導していた筈です。山口千春ちゃんも間違いなくその例に漏れず、でしょうね…

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