国立劇場「鬼一法眼三略巻」

国立劇場十二月歌舞伎公演を鑑賞。中央よりやや上手の二階最前列。

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鬼一法眼三略巻(きいちほうげんさんりゃくのまき)
 序 幕 六波羅清盛館の場
 二幕目 今出川鬼一法眼館菊畑の場
 三幕目 檜垣茶屋の場
 大 詰 大蔵館奥殿の場

序幕の六波羅清盛館は四十三年ぶりの上演とのこと。
いままでも菊畑を観る際に虎蔵実ハ牛若丸と皆鶴姫は何処から帰ってくるのか、湛海はどういった人物か等々解説上では分かっていたものの、こうして舞台上で清盛館の出来事を見せられると菊畑での皆鶴姫、湛海の印象が変わってくる。
芝雀さんが演じる皆鶴姫は序幕で上品さと気強さを併せ持ったところをしっかりと見せ、後の菊畑で見せる牛若丸への一途な思いに好感を持たせる。
笠原湛海を演じたのは歌昇くん。
この面々とこの役で渡り合うのは彼自身が若すぎて毎日大変だろうが、二階席から見る分には王子の鬘に負けまいと奮闘している姿が好印象。
横暴な振る舞いの清盛を歌六さん、それに諫言する重盛を錦之助さんの組み合わせも良い。

二幕目菊畑は吉右衛門さんが鬼一法眼を初役で演じ、これまで私にとって吉右衛門さんの印象が強かった知恵内実ハ鬼三太を又五郎さんが演じていらっしゃる。
吉右衛門さんと又五郎さんの息があっていらっしゃるのだろう、鬼一と鬼三太の探り合いに観ているこちらも引き込まれる。
虎蔵実ハ牛若丸の梅玉さんの安定感はさすがで、気品のある奴(やっこ)という歌舞伎を知らなきゃ分かるような分からない人物を自然に演じてしまう。
そりゃあ皆鶴姫も惚れるさ(笑)。
歌江姉さんの元気な姿が嬉しく、女小姓の廣松くんが可愛らしい。

そして、一條大蔵譚。
一條大蔵卿の吉右衛門さん、吉岡鬼次郎の梅玉さんは全幕から引き続きの出演。
通しでも見取でも歌舞伎ではよくあることだが、数十分後には見事に別人になってるんだよなぁ…などと、歌舞伎見始めて何年よ?なことを今更書いてみる(いや、ここんとこ色々あって観劇ペースが落ちてるんです。勘弁しておくんなましよ)。
吉右衛門さんの大蔵卿はさすがのメリハリ。
作り阿呆と行ったり来たりする辺りは面白くもあり悲しくもあり。
序幕にしっかりと清盛を見せられていることもあって、大蔵卿も悲劇の人だなぁと改めて思う。
梅玉さんの鬼次郎と東蔵さんのお京の夫婦は地に足がついている感じ。
鳴瀬の高麗蔵さんが筋書きのなかで「不幸な死を迎える役の多い私…」と話されていることにクスッとしながらも、やはり最も真っ当に生きている筈なのに死んでしまうお役は似合っていらっしゃる。
ここのところ舞台で見る度に思うのだが、米吉(女小姓弥生)を連れて帰りたい…(笑)。

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