「勧進帳」。七代目市川團十郎が自分の家の得意芸として選んだ「歌舞伎十八番」の一つで、人気のある演目です。
平成16年12月国立劇場の感想(こちら)で「勧進帳」にあまり興味がわかないんで、なぜ興味がわかないのかをそのうち-云々-と書いておいたのですが、ちょうど「50音ぶろぐ」で「か」の項にきたので書いてみることにしました。
簡単に(かなりくだけて、いや、ふざけて)説明すると… 指名手配中の源義経一行が安宅関で詮議を受ける。山伏だと言い張り書いてもいない勧進帳を読み上げて山伏問答に答える武蔵坊弁慶。いったんは通そうとした関守の富樫だったが部下から言われて「ちょっとまったぁ!そいつ義経?」。すると「おめぇ、トロトロしてっから疑われんだよっ!」と主人である筈の義経を叩く弁慶。「そこまでやるか?!」と富樫は全てを知りながらも一行を通してあげましたとさ。って終わりかよッ!いや、この後、富樫がいなくなったあとに弁慶は義経に詫びて、義経は弁慶を良くやったと褒める。富樫が再び出てきて「先ほどは失礼した」と弁慶に酒を振る舞い、いい気分で飲みつつもとにかく義経を先へと急がせる弁慶なのであった …という感じでしょうか。歌舞伎に造詣の深い方、勧進帳が好きな方、怒らないで下さいね。
能の舞台を歌舞伎に持ってきた松羽目物と言われるジャンルで、舞台上の全てのものが極めてシンプルでありながら様々な事柄が(強力に身をやつす義経の悲劇、義経と弁慶の主従関係、弁慶vs富樫、全てを知っていながら関所を通す富樫)が凝縮されている演目であり、そこが勧進帳の魅力なのかと思います。じゃ、なんで興味ないの?ってことになるわけですが、多分、義経と弁慶にsympathyを感じないからかもしれない…ハァ???弁慶と義経って、なんでこんなに大きく取り上げられるんだろう。ま、ようするに私、ひねくれものなんですね。なんかね、ぜぇ?んぶ頼朝が悪いのかよっ!義仲だってもっと有名になってもいいんじゃないの?なぁんて具合に…。ハイ、その程度のことでござんす。源平ものが嫌いってこともないです。義経があまり関係ない義経千本桜なんか通しで観ても全然苦じゃなかったし、同じ松羽目もので言えば、先月の松竹座(船弁慶)では義経から別れを告げられる静御前が可哀想で仕方なかったですよ。義経が嫌いって訳ではないですよ、念のため。
ところで、富樫が本当に騙されて通してしまったという話だったらどんな感じだろう?騙されていなくても、お酒なんか振舞わずにもっともっと苦々しい気持ちで通していたらどう?いや、通さなかったらどうする?安宅関を通させなかった富樫…観たいかも。「いかなる事情があれど主人に対してなんたる狼藉!それを許す判官殿も同じこと!弁慶は即刻処刑、判官殿は捕らえて鎌倉殿にお渡し申す!」とかなんとか言っちゃってさ(笑)…笑えないって。笑えない以上に、今月、富樫を演じている染五郎さんに大変申し訳ないです、ごめんなさい。
結論。性に合わないものは合わない…な?んてことではあまりにガキなので、これからも違った視点で観られる角度を模索し続けます。