歌舞伎座 六月大歌舞伎・伍

夜の部、二回目(一回目の感想はこちら)。1階一桁列30番台。びわシャーベット、茹であげ小豆(土産持ち帰り)、豆かん(土産持ち帰り)。観劇日は25日の千穐楽前日。

「盟三五大切」

前回よりも個々の人間ドラマが鮮明になったような印象を受けた。決して孤立しているわけではなく ?これだけの役者さんが揃っていて楽前日にバラバラなわけないって(笑)? ここに来るまでそれぞれが背負ってきたものが感じられた。主役の三人のみならず、他の登場人物についても性格が良く表れていたのではないだろうか。歌舞伎に限ったことではないけれど、役柄とソレを演じている役者さん、役柄と役柄、役者さんと役者さんの微妙な呼吸が合うことで、上演されていないところでの登場人物同士の繋がりが観客側にも感じられるようになるんじゃないかと思う。自分が二回目の観劇だから物語にすんなり入っていけたのかもしれないが、二回目なのに新鮮に感じられた部分もある。

正直言うと私は前回の観劇で、源五兵衛があんなことになってしまうほど小万に惚れているようには感じなかったのだ。前回感じた鷹揚さに加えて無骨な面を強くみせるようにされたのか、観ているこちらに「小万のこととなるとこの人は…」と思わずため息をつかせるような人物になっていて、助右ヱ門の怒り、八右衛門の嘆き、気の毒がる菊野といった周囲の人々の気持ちがスムーズに私に届いた。あ、でも源五兵衛に思い入れて観る人や、三五郎や小万の視点に立って観るとまた別か。

小万殺しの場は前回は“美しい”とか書いたのだけれど、今回はとにかく悲しい場面に感じた。源五兵衛は意趣返しで殺しに行ってはいるが、小万を我がものにするには殺すしかない。そしてその小万は三五郎のことを思いながら死んでいく。そう、三五郎のことを思う小万がひしひしと感じられた。だから余計に源五兵衛は哀れだ。ほんの一時のすれ違いで殺されてしまった小万、それでも三五郎と出会わなければ良かったなんて思ってはいなかったのだろうな。

その三五郎はすごくパワーアップしていた、と思う。で、どんなパワーだよ(笑)。色気もしたたかさも、勘当を解いてもらった時の喜びも、死に際も…。源五兵衛をなんとか連れ出そうとする時の八右衛門を睨みつける顔が好き。なんていうのかなぁ、男なら絶対だまされたくないヤツだけど、女ならだまされてみたい男。あれやこれやと小万を自分の策に使ってはいるんだけど惚れてることがわかるところが憎い。最後、その小万の首を三五郎の膝にのせてやってほしいと思っているうちに幕が閉じた。

「良寛と子守」

前回はちょっと長く感じたのだけれど、今回はそうでもなかった。ちょっと右近くんは割を食ってしまったけれど、これからの役者人生、きっと、もっと色んなことがありまっせ。ところで、彼は今後、女形でいくのかな?正月のお久は観ていないのだが、どんな感じだったのだろう。

「教草吉原雀」

良い意味で、本当に何も考えずに頭をからっぽにして目と耳で楽しめる。魁春さんはお昼の姫御寮よりやっぱり生き生きしていた。前回よりもちょっと奥様っぽく感じた(意味わかんねぇよ)。ぶっ返り後の歌昇さんがやたら凛々しかったのが印象的。

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さてさて、なんとか六月中に全ての感想を書き終えることが出来た。今月は本当に楽しかった。昼夜連続を二回というのは初体験。一人の役者さんが色んな役を演じることを観る楽しさを存分に味わえたと思う。壱から伍までの感想では触れていない役者さんにも本当に楽しませて頂いた。こういう観劇日程になったのも、染さんが昼のキリで大役をされてたことも理由の一つ。いつも、もう十五年、いや十年早く歌舞伎に出会っていたら染さんじゃなくて、仁左さんに夢中になっていたかもしれないと思うのだが、今月もひしひしとそれを感じた。

実はいまだに梅川と忠兵衛が夢に出てくる(-_-;)

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